北ヒダカの人々
ナオト
北ヒダカの善知鳥(うとう)の村 ― 現在の陸奥湾沿い ― に住む。
土器作りの名手。
しかし、ナオトが土器作りだけをやりたいと望んだとしても、それだけやって生きていくわけにはいかない。
村の人たちとは、いろいろやることが多かった。
村の家々は、丸い形をしている。
丸木と竹、茅と杉の皮、それらを組み合わせて作られている。
中は暗いが、冬の寒さを防いでくれる。
戸口の横の土間で、それらの土器は作られた。
母
ナオトの母。
2人で暮らしている。
善知鳥の人たちは、海で獲れるものを食べる。
春には、浜で貝を採る。
大きな嵐が去った後は、浜で流木や藻を拾う。
小舟に乗り、イワシやアジ、ハタハタ、タラを獲り、さらに沖に出て、タイやマグロも獲る。
ときには村を挙げて、ニシンの大群、サメ、クジラを網に追い込む。
このような善知鳥には、行商人が来る。
海産物の評判がいいからだった。
特にホタテの貝柱を干したものは、よく取引されていた。
…余談ですが。
私は、青森には1度だけ行ったことがあります。
地元の人から「漁師で飢え死にしたものはいない」と聞いたのを思い出しました。
当時から海産物が豊富だったのでしょうね。
カジカ
善知鳥の村に住む、口がわるい若者。
ナオトとともに、多くの仕事をしている。
石は多く必要とされた。
日々の炊事には平らな石を使う。
舟や漁で使う錘(おもり)も石で作られる。
炭焼き窯にも使われる。
石を集めるのは冬。
大きな石を橇(そり)に乗せて山から引いてくる。
炭焼きも重要な仕事だった。
夏の間に倒しておいた木を、膝下まで切り削って、炭焼き窯に積み上げる。
7晩かけて蒸し焼きにした。
ハル
善知鳥の村に住む娘。
ナオトとは幼なじみで、一緒に荷物を背負って運んだ。
春から夏にかけては、善知鳥の海産物を詰めた俵は背負われて、十三湊まで運ばれた。
秋には、岩木川沿いの鶴池の村で、“ コメ ” も積み出された。
紀元前92年は縄文の終わりかけ。
すでに水田(みずた)はあって、“ コメ ” は収穫されている。
“ コメ ” は蒸して食べるほか、稲藁は筵(むしろ)や縄にして使われた。
この“ コメ ” は貴重。
交易品の対象となっていた。
籾殻付きの “ コメ ” の俵も、十三湊まで運ばれた。
この物語では、籾殻米も玄米も “ コメ ” と表現する。
ちなみに現在の白米が一般に食されていたとは、この物語では想定していない。
それは東アジア、モンゴル高原、中央アジアでも同様である…と、著者の安達さんは、当時の食べ物について詳細に描き込んでます。
カエデ
ナオトの姉。
十三湊に暮らしている。
善知鳥の村からは歩いて1日の距離にある。
夫は双胴舟の舟長。
大陸との交易を生業にしていた。
十三湊は、大小の舟が並んでいる。
交易を生業としている者が多い。
周囲の村々からも人が集まる。
海産物、コメ。
麻布、毛皮。
動物の骨から作った針などの加工品、といった品々も集まった。
あとは、壺入りの漆や、椀などの漆製品。
“ 辰砂 ” といわれる水銀の原料の赤石などもある。
これらの荷は、能代の湊 ― 現在の秋田県能代市 ― からもくる。
さらに遠くの高志 ― 北陸 ― から運ばれたヒスイや光る貝で作られた装飾品もある。
ときには丹後 ― 山陰 ― からの真綿もあった。
…著者の安達さんは。
当時の十三湊や十三湖の位置や大きさは、現在とは随分と違っている、と記してます。
十三湖は、今よりも南北に長い。
水面も遥かに広かった。
そう、いくつかの資料で検証されてます…と思って資料を載せようとしたら、BASEのシステムの都合で入りきりませんでした。
3枚を1枚にまとめてあります。
十三湊は、重要な交易の地だった。
各地から品々は、小舟から大きな双胴舟に乗せかえられて大陸に運ばれる。
大陸に向けて運ばれたのは、“ 俵物 ” という海産物の乾物。
紀元前92年ころには、“ コメ ” の扱いも増えていた。
換わりに、大陸からは “ 鉄 ” が渡ってきていた。
オシト
ナオトの父。
象潟(さきかた)― 現在の秋田県にかほ市―出身。
主に、木を切り出す仕事をしていた。
が、ある日、漁に出たまま戻らなかった。
ナオトは後に大陸にわたるが、父が使っていた背負子(しょいこ)と行動をともにする。
背負子のほかには、ひょうたんの水筒、鹿皮の靴…そういった道具が、世代をまたいで使われている様子が描かれています。
100年も200年どころか、さらに300年ほども使われ続けた道具も多くあったでしょうね。
今でも実用されている道具の原型も、この2100年前にはあったかも…と想像もしました。
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■ この物語を目にしたきっかけ ■
■ 主人公ナオトの旅の風景に触れてみてください ■
- ヒダカから大陸へ渡る -
■ 物語の中で生きる人びと ■
- 登場人物 -
- 北ヒダカの人々 -
- ヒダカの舟乗りたち -
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